定年退職前に、老後の収入源を確保しようと始めた私たち夫婦の不動産投資。選んだのは、意外にも人気のない築古の団地でした。2室合わせて、800万円ほどの価格は魅力的でしたが、そこから始まる道のりは決して平坦ではありませんでした。
不動産屋から紹介されたリフォーム会社は、どうも割高な印象。そこで私たちはインターネットで探し当てた個人事業主の大工さんに直接依頼することにしました。腕の確かな職人さんでしたが、いかんせんリフォームセンスは今ひとつ。そこで、私が先頭に立ってリフォームのアイデアを出し、人気のIKEA家具も積極的に取り入れました。
団地の床を全てフローリングにするため、生まれて初めてノコギリを握り、二人で畳を丁寧に解体。大量の畳をビニール袋に詰め、共同階段を汚さないよう細心の注意を払いました。廃棄する際には、レンタカーを借り、便利屋さんに手伝ってもらう始末。思いがけない出費に、正直驚きました。フローリング材やインターフォンなどの設備も、インターネットで自ら探し、購入。まさに大家が設備を用意してのリフォームです。自分のイメージ通りにできるのは良いのですが、時間と手間は相当なものでした。壁紙やガス器具など、専門的な工事だけは業者に依頼しましたが。
始めた当時は、顧客は転勤族でしたが、コロナ禍をきっかけに転勤もなくなり顧客層も変わりました。しかし、不動産投資をしている私たちに、とって、許し難いことが起こりました。信頼していた不動産業者には、裏切られる経験もしました。空室が出た際、リフォーム前の汚い畳の部屋の写真をいつまでもインターネットに掲載し、即入居可能な状態なのに「要相談」とする始末。これは明らかな営業妨害で、本当に困り果てました。大手チェーン店でしたが、フランチャイズの落とし穴もあるものだと痛感しました。
途方に暮れていた私たちを救ってくれたのは、近くの電鉄会社のテナントに入っている大手不動産会社の賃貸住宅サービスさんでした。入居審査もしっかりしており、担当者の対応も誠実。物件から少し距離はありましたが、依頼してから3ヶ月で無事に入居者が決まりました。仲介料とは別に、営業強化のために入居依頼金として15万円支払ったのは、痛い出費でした。けれども、これは、世間一般の相場です。
今回、入居したのは、最近の社会情勢を反映してか、社宅扱いの外国人の研修生。期間があるため、いずれ入れ替わりがあるでしょう。しかし、社宅扱いなので、長く利用していだけそうな良い条件でした。築年数も古くなったことで家賃も下がり、競争力を高めるためにエアコンも設置。さらに、たまたま使っていない洗濯機があったので、プレゼントすることにしました。
不動産業界には、残念ながら悪徳業者も存在します。そうした業者に対応できるための知識と経験、そうして精神的強さがなければ、不動産投資は安易に始めるべきではありません。リフォーム、入居者対応、空室対策、そして出口戦略まで、考えることが山ほどあります。私たちの出口戦略は建て替えですが、なんと遺跡発掘が義務つけられ、想定外の費用が発生する見込みです。その影響もあってか、階段のみの団地にも関わらず、管理費は、2万円以上。家賃は安く、表面利回りは高く見えても、実質利回りは5-6%です。空室リスクはもちろん、不動産会社に客付けを依頼する際に、強制ではないものの、お礼として、費用が発生することも考慮に入れる必要があります。
空室をいかに短くできるか、魅力的なリフォームをいかに効率的に行うか。それには、体力も、DIYのセンスも必要です。こうした現実をしっかり理解した上で不動産投資をするならば、老後の収入源の一つとしては有効かもしれません。私たちは、立地にはこだわり、駅から徒歩圏内の物件を選びました。購入当時は、建て替えの話はありませんでしたが、これからもコツコツと不動産投資を維持していくつもりです。
「もっと不動産投資をしませんか?」という誘いも頻繁にありますが、将来的に自宅も賃貸に出すことを考えていると伝えています。これが、私たち夫婦が細々と不動産投資で収入を得ている実情です。決して楽ではありませんし、誰にでもおすすめできるわけではありません。老後の生活設計において、自分に合った収入源をどう確保するか。この経験が、少しでもみなさまの参考になれば、幸いです。
